【ステイトメント】
私は現代社会をテーマにして アート作品を研究・制作している。
2014年以降は大気中に含まれている様々な物質をモチーフに取り入れて
「我々は見えるものと見えないものに囲まれて生活している」という事を
テーマにした作品を創っている。
なぜこのテーマにしたかというと、幼少期から20代は喘息持ちであったために
発作が起きると、汚染された空気と澄み切った空気の違いを身体が敏感に
感じ取っていたため私にとって尤も身近に感じる事柄だったからである。
それらを「桜の国の降る雨に」「散歩道」シリーズで表現した。
※2016年は更に進化させ、
常に変化し続ける時代の流れに生きる人間の日常生活の中で
(背景のわずかなマーブリングはそれを表現している)
ラナンキュラスの花粉(花粉の象徴的な形態にデザインした)が、
慎ましやかに飛び回って受粉をし、普遍的に生命を育むそのワンショットを表現した。
※2017年は光(荷電粒子)をモチーフにした。
光は我々の心理状態に大きく影響を与える物質であるため、光と気流が屈折して起こる
陽炎(揺らぎ)などを取り入れることで我々の取り巻く環境的・心理的状況を絵画化した。
光(荷電粒子)部分には蓄光パウダーを塗り込み、暗所で実際に発光するという
仕掛け(遊び心)も盛り込んでいる。
※2018年から美術史を本格的に学ぶようになり、
物故の巨匠を現世に蘇らせる「親方降臨シリーズ」の制作に着手する。
※2019年は現代アートのコンセプトありきの制作に息苦しさを感じ始めたため、
幼少期に初めてサンタクロースがくれたクリスマスプレゼントの
心躍るような自由さを求め、キャンバスに包装紙の絵柄を直接描き
クリスマスプレゼントに見立てた「ギフトメモリーズシリーズ」を制作する。
※2020~2021年はコロナの影響で海外渡航禁止になったため、
コロナ禍になる直前に行ったワシントンナショナルギャラリーで見た美術鑑賞と疫病の関連性を
描いた「ドラフト」シリーズ、ルネサンス期のペストと仮面舞踏会の関わりを
現代のマスク社会に関連付けた「マスカレイド」シリーズに取り組む。
※2022年は名画上に、マチエールと絵肌で過去と未来を表現した
「レストレーションシリーズ」という抽象絵画にチャレンジ。
その他、巨匠の自画像作品の目元から「写実的な作者(死者)」が現世をそっとのぞき込んだり、
赤瀬川源平「トマソン」上を兵士が彷徨う「アートアーマメント」シリーズなど
ウクライナ戦争を意識した作品に取り組む。
【現在の作風の由来】
私は、小学生の頃にジオラマ模型や時代劇の小道具(小判やかつら、刀など)を
紙でよく作っていたため(父が時代劇ドラマをよく見ていた影響もあり)
この経験が「分子モデル(模型)」に着目した要因である。
更には、これも幼少期からなのだが
マジックや錯視にとても興味があったため、手品の種明かしの本を読んだり
マジックグッズを大量にコレクションして人前で演じたりするようになり、
「目の前で起こっている現象以外にも様々な仕掛けがあるのだ」ということを実感し、
現在の「目に見えないが存在する」という解釈の着想を得た。
それらを視覚的に融合・再構築させながら、現在の作風に辿り着いた。
そして私のビビットな色彩感覚は、20代前半には印象派のモネや横尾忠則が好きになり
度々模写を行うようになりこの方々から影響を受けた。
鮮やかな色彩に囲まれると、今でもなぜか落ち着くのである。